事務所を畳んだので、今、うちにはふた部屋分のたくさんの道具が溢れかえっています。 何もかもが、お気に入りのデザインでちょっとずつ多い。まさに豊かさだなぁと思いながら、メルカリ用のボックスを作っています。ゆっくりちょっとずつ不要なものを分かち合おう。
例えば、ハサミが今4つあります。事務用とキッチン用。事務用はひとつはノルウェーで私が手に入れたもの。もうひとつは、前の職場を辞める時に、上司にお願いしてもらったもの。コロラド大学の事務用品として使われていたよく切れるハサミ。「これもらっていいですか?」と聞いた時、上司は「もっと高いものを選びなさい」と渋い顔をしていたのですが、実は、これが上司のお気に入りのハサミであること、そして、彼もまた、アメリカならではのハサミやものの在り方を気に入っていることを私は知っていました。だから、きっと使うたびにその上司のセンスを、それを言葉にしなくても、大事だと共有した時間を、価値観を思い出すだろうな、それはきっとちょっと心の温まることだなぁと思ったのです。何かを職場の記念にもらうとしたら、そういうものが私はよかったのです。
ここ最近、訳あって、お金にものすごく価値を置く人たち、そして、それがなくなったら自分には全然価値がないと思っている人たちに何人か会いました。元々知っている人たちだったのですが、そういう場面に出くわすことが多くなったのです。私はお金の定規では全然動いてないので、その考え方は青天の霹靂で、「まぁ!」と思ったし、「さぞかしそれは大変でしょうね」とも思いました。
お金はひとつのツールです。とってもありがたくて便利な道具です。でも、それ以外にも、たくさん豊かさというものは、溢れています。お金はなくては生きられないし、あったほうがいいに決まってますが、そういうものは他にもたくさんあります。例えば、上司にハサミをもらうこと。それを使いながら時々、その時代を思い出すこと。切れ味のいいハサミの良さを知ること。毎日の中で、余裕のある時間があること。ゴミ出しが億劫じゃないコンディション。たくさんあります。
もしお金を持っていることがその人の価値を決めるとしたら、人はいつもお金を作ることに追われてしまいます。暮らすことより、自分を大事にすることより、お金が上に来てしまいます。そうなったら、お金が暮らしを支配してしまう。私は、その順番を変えたかったのです。私がいて、自由があって、そこにお金もある。そういう順番で、暮らしを作りたかった。そして、それは少しずつですがかなっています。
お金はひとつの例ですが、お金だけじゃなくて、私たちは、自分の価値を何かできること、することにおいてしまうことが多々あります。あなたの価値は、そして、私の価値は、ただ存在するだけで、本当はものすごーくあるのにね。と、今の私は思います。それは体感なので、説明して伝えられることではないのですが、この1年、私がとってもしみじみ学んできたとっても大事な宝物です。ご一緒にいる人たちには、それが少しずつ伝わるといいなぁと、アメリカのハサミで、封筒を切りながら思ったのでした。M先生、あのハサミ、今は、私のデスクに居座っております。お元気ですか?




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